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板橋区民、10万年前の壁に挑む。〜サワガニとカルガモに癒されながら〜

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 フレンチレストランのメニューのような記事タイトルになったのは、先日、30年来の友人と五反田でディナーをしたせいかもしれない。


おかげさまで、たまに当ブログ宛に記事内容についての問い合わせをいただく場合がある。かつて、板橋区民が子供の頃、我が赤塚郷で貝化石の収集をしていたことに何度か触れたことがあったけれど、その記事が縁となって実現したプロジェクトが今回の出来事である。

貝化石の露出場所については、現在でも定期的にいくつかのポイントをパトロールしている。しかし、いずれもマンション建設などで消えていく運命にあり、その度にせめて短時間でも調べられないかと気を揉んでいた。

今回は自分がチェックしていたポイントではないけれど、いろいろな巡り合わせに恵まれ、調査の末端に加えていただけることになった。

調査地点は、板橋区立美術館の対面で行われているマンション建設現場だ。調査チームは、文科省のK氏、板橋区の文化財係H氏、郷土資料館I氏、そして板橋区民の4人である。

最初に当記事にアクセスをいただいたのはK氏で、氏は基本的に東京で出土する貝化石について研究をしておられ、特に”トウキョウホタテガイ”の収集研究に熱心なのだそうだ。板橋区内での出土例は仲宿あたりで見つかっている他は確認されておらず、生息範囲を確認するための調査の機会を伺っていたのであった。

板橋区の文化財関係の諸氏も地学や地層に仕事を超えた興味がおありで、各人の思惑が一致してのプロジェクトチームである。板橋区民も子供の頃の気持ちのまま参加を願い出たが、基礎知識からして浅学の身なので苦力としての参加であった。

現場は赤塚中央通りの松月院から荒川へ向かう道の延長上にあり、谷状になっていることから、以前は川が流れ削られた土地であることがわかる。調査地点は道路より若干上の地点で、海抜的にあの有名な「成増露頭」の下部と同じくらいと想定され、貝化石の痕跡が見つかるとの期待があった。

地上から1.6メートルくらいの所に礫層が認められ、そこから地下水が幾筋も流れ、あたりはグチャグチャである。足を踏み入れると場所によっては膝くらいまで埋まり、足が抜けなくなってしまう。久しぶりに底なし沼気分を味わった。

礫層は東京礫層(成増礫層)と呼ばれる地点で、この下部が「東京層」を形成しており、いわば古代の東京湾の層である。東京礫層に埋まり始めたのが10万年前で、この部分にてナウマン象の化石が見つかるらしい。我が板橋区でも加賀あたりで発見されてますね。

貝の化石が見つかるのもそのあたりなので、早速、壁に取り付き、泥にまみれながら円匙や移植や手ガリなどで削って行く。壁面を綺麗に削ると、”生痕”が認められた。これは、海底に住み穴を掘って暮らす動物の活動痕で、無数に存在していた。

泥土に足を取られながら円匙でガンガン削っていると、上の方から転げ落ちてきた物があった。なんだこれは?と拾い上げると、それは何とサワガニであった。
”板橋区でサワガニ?”ほとんど聞いたことはないかもしれないが、板橋区民が子供のころ、徳丸の鷹番の坂の崖線の水が湧いていた所に、サワガニが生息していたのを見たことがあった。それ以来、何十年かぶりの遭遇だ。まさに”生きとったんか、ワレ”という感じだ。(その後ネットで調べると、区内でサワガニの生息確認を記事にしておられる方がいたので、いくつかポイントがあるのだろう。)

一時、サワガニで和んだのち、また苦力作業へと戻る。成増露頭では大量の貝化石が認められていたが、ここの地点ではなかなか出てこない。ようやく小さな欠片(貝そのものでは無く土に圧着された貝殻の模様痕。)が確認できたところでタイムアウト。

調査はマンション工事中を無理を言ってお願いしたのであまり時間がなく、これまでとなった。貝殻痕の出土した範囲をサンプルとして切り出し、今回の発掘作業は終わった。詳細な分析結果は専門家であるK氏の分析待ちで、ただの苦力であった板橋区民に語るすべはありませんので悪しからず。ガマンできない方は、板橋区立郷土資料館でこの春に行われていた特別展、「水のゆくえ」の図録を買いましょう。成増露頭など詳細な解説が載っているので大変勉強になります。


肉体労働後の全身泥だらけになった体を引きずり、ため池公園にさしかかると、おお、今年もかるがもの親子が元気に泳いでいるじゃありませんか。思わず疲労も安らぐ景色ではありました。

徳丸には、まだ板橋区民の見つけた有望な場所が残っており、そこの発掘が叶うことを今後に期待したい。

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